2025年6月に大阪で開催されたBrazeのオフラインイベントから、博報堂 買物研究所 飯島拓海氏のセッション「AIエージェントと暮らす時代の購買行動」をレポートします。新購買行動モデル「DREAM」を軸に、AIエージェント時代にマーケターが持つべき視点を考察します。
カスタマーエンゲージメントプラットフォーム Braze は、2025年6月に大阪でオフラインイベント『変化を先取りする力:消費者動向とCX戦略の最前線 in 大阪』を開催しました。本稿では、株式会社博報堂 買物研究所の上席研究員である飯島 拓海 氏によるセッション『AIエージェントと暮らす時代の購買行動はどう進化する?~新購買行動モデル「DREAM」で考えるショッパーインサイトの変化~』についてレポートします。
BrazeがプラットフォームへのAI機能の実装を積極的に進めていることからも明らかなように、今やAI、特に生成AIはマーケティング活動と切り離せない存在です。今回のセッションは、その変化が単なる業務効率化に留まらず、生活者の購買行動そのものを根底から覆す可能性を秘めていることを、描き出すものでした。データ活用のプロフェッショナルである私たちの視点から、このインパクトのあるセッションの内容を紐解き、これからのマーケターが何をすべきか考察します。
INDEX
セッションは、生成AIがいかに私たちの身近な購買行動を変えつつあるか、具体的な事例と共に紹介するところから始まりました。
そして、こうしたAIによる個別のタスク処理は、やがて包括的なサポートを担う「AIエージェント」へと進化します。AIエージェントとは、私たちの目的を理解し、計画から実行までを自律的に一気通貫でサポートしてくれる存在です。
このAIエージェントの登場こそが、購買行動のルールを根本から変えると、セッションでは語られました。
では、AIエージェントと共存する時代の購買行動は、どのように変わるのでしょうか。博報堂 飯島氏は、その答えを導き出すために「2040年の未来にいるバーチャル生活者へのインタビュー」というユニークな手法で未来を予測しました。
2040年のバーチャル生活者とAIエージェントの関係は、単なる「人間とツール」という関係を超えた、日々の暮らしに深く根差した「パートナー」のような関係性として描かれています。
AIエージェントは人間相手ではないからこそ、見栄を張らずに何でも相談できる「相棒」のような存在になります。この継続的な対話を通じて、AIエージェントは生活者本人よりもその人のことに詳しくなり、生活者自身も気づいていなかった潜在的なニーズや趣味嗜好に気づかされる傾向が見られました。
セッションでは、具体的なインタビューの例として2名が紹介されました。
ここでも、AIとの「対話」が重要な役割を果たしています。
このようなインタビューを25人分実施し、結果の分析から見えてきたのが、新しい購買行動モデル「DREAM」です。「DREAM」は、複数の買い物ジャーニーから共通のパターンを抽出し、体系化したモデルです。
これは、従来の「AIDMA」や「AISAS」のような直線的なファネル構造とは全く異なる、ループ構造を持つモデルです。
新しい購買行動モデル「DREAM」の登場は、これまでマーケターが前提としてきた「AIDMA」や「AISAS」といったモデルからの根本的な転換を意味します。AIエージェントとの協働により、生活者の購買プロセスは各フェーズで大きく変化していきます。
AIDMA/AISASにおける「Attention(注意)」「Interest(関心)」「Search(検索)」という初期段階は、「DREAM」では「Dialogue(対話)」と「Recommended(推奨)」に集約・進化します。
これまでは、生活者自身がニーズを認知し、能動的に情報を「検索」するのが一般的でした。しかしDREAMの時代では、生活者はAIエージェントとの日常的な「対話」を通じて、自分でも気づいていなかった潜在的なニーズを自然に引き出されます。そして、その深い理解に基づいた「推奨」によって、商品やサービスを「知る」ことになるのです。情報のインプットが、能動的な"引き出し"から、受動的かつ継続的な"対話"へと変化します。
「Action(購買)」のフェーズは、単なる購入決定や決済行為ではなくなります。その前段階である「Experience(体験)」の重要性が飛躍的に高まり、購入は「Assurance(確信・承認)」というプロセスに変わります。
VR/ARなどの技術を活用し、リアルとデジタルの垣根なく商品を心ゆくまで「体験」することで、購入後の失敗リスクを極限まで減らすことができます。そして、そのリッチな体験によって得られた強い「確信」に基づき、最終的な購入を「承認」するのです。これは、かつての"えいや"で決めていた購買行動とは質的に異なります。
購入後の「Share(共有)」は、口コミ投稿やSNSでの発信といった一過性のものから、AIエージェントとの継続的な関係性を育む「Management(管理)」へと進化します。生活者は、商品の使用感といった感想だけでなく、利用時の感情データや対話の履歴といった、より多角的で質の高い情報をAIエージェントにフィードバックします。この「管理」された情報共有が、次の「対話」や「推奨」の精度をさらに高め、顧客とのエンゲージメントのループを永続的に強化していくのです。
こうした生活者の購買行動の根本的な変化は、私たちマーケターに何を問いかけているのでしょうか。セッションでは、この新しい潮流にマーケターがどう向き合うべきか、4つの具体的な変化が示されました。
今回のセッションは、「対話(Dialogue)」の時代の到来を明確に示唆するものでした。
AIエージェントが生活者の信頼するパートナーとなる未来は、決して遠い話ではありません。マーケターは、この不可逆な変化を真正面から受け止め、これまでの常識を疑い、新しい顧客体験の創造へと舵を切る必要があります。
この大きな地殻変動の時代において、「いかに質の高い対話データを収集し、顧客理解に繋げ、次の対話(エンゲージメント)に活かすか」が、企業の競争力を左右することは間違いないでしょう。
Brazeが提供するカスタマーエンゲージメントプラットフォームは、まさにこのDREAMモデルで示された「対話」と「推奨」をデータドリブンで実現するための強力なエンジンとなり得ます。リアルタイムで顧客データを処理し、パーソナライズされたコミュニケーションを自動実行するBrazeのアーキテクチャは、AI時代に適したものと言えます。
私たちパワー・インタラクティブは、Brazeのポテンシャルを最大限に引き出し、この大きな変化の波を乗りこなし、未来の顧客エンゲージメントをリードしていきたいと考えています。
今回のイベントレポートが、皆様のマーケティング活動の一助となれば幸いです。
博報堂 買物研究所が提唱する、AIエージェントと共存する時代の購買行動モデルです。従来のAIDMA/AISASのような直線的ファネルと異なり、ループ構造を持ちます。
DREAMは従来モデルと何が違いますか?「検索」から「対話」へ、「行動(購買)」から「体験」と「確信」へ、「シェア」から「管理」へと各フェーズが変化し、AIエージェントとの継続的な対話が中心になります。
AIエージェントは購買行動にどう影響しますか?ユーザーの相棒として日常的に対話し、一人ひとりに最適化された提案を行うことで、「検索から提案へ」というシフトを引き起こします。
マーケターはこの変化にどう対応すべきですか?質の高い対話データを収集して顧客理解につなげ、次のエンゲージメントに活かすことが重要になります。
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