Braze導入の実体験レポ後編。約3ヶ月で最初のサイト、約12ヶ月で全サイトへ展開したスケジュール、導入主導側と現場の分断・データ設計・IPウォームアップなどの苦労、そしてデータの一元化・A/Bテストの高速化・きめ細かなセグメント・手作業削減という着実な成果(Before/After)を現場目線で紹介します。
パワー・インタラクティブの奥村です。 今回は実体験レポの後編、前職でBrazeを導入した際の続きをお届けします。
【前回のおさらい】 前編では、私が以前所属していたヨーロッパの企業を舞台に、当時のマーケティング現場が抱えていた課題についてお話ししました。 【実体験レポ前編】なぜBrazeが必要だったのか?欧州CRM現場で起きていたチャネル分断と運用課題
これらの課題を打破するため、Brazeの導入が決定したところまでをお伝えしました。
本稿ではその後、実際にBrazeを導入するにあたってのスケジュールや導入の際に苦労したこと、そして導入前に抱えていた課題は解決されたのかについてお伝えしていきます。 「導入に向けて事前にどんな点を整理しておくべきか」「現場レベルでどのような壁や困難が予想されるのか」について、私のリアルな実体験が一つの参考になれば幸いです。
Braze導入を決めた当時、複数のマーケット(国)とカテゴリで、合計15近くのサイトを運営していました。そのため、「どのサイトから移行を開始するか」「どの機能から使い始めるか」といった全体のスケジュール設計が最初のハードルでした。
結論から言うと、導入決定から最初のサイトへの実装までは約3ヶ月、その後全サイトに展開を完了するまでには約12ヶ月というタイムラインで進行しました。
これらの計画を遂行するため、Techチーム内に既存ツールからBrazeへの移行に対応するための専門チームが新たに編成され、本格的にプロジェクトが始動。一方、私たちCRMチームとしては、既存ツールからの各サイトのユーザーリスト作成や、Brazeで使用するためのテンプレート作成、メールのIP Warm upの計画の立案やコンテンツ準備、現行のシナリオの整理など、実際のオペレーションに向けた準備を並行して進めていきました。
実装にあたっては、まずはテスト導入(フェーズ1)として、会員数が十分にあり、かつCRMアクティビティを積極的に行っているサイトを最初の導入先に選びました。このフェーズ1では、「既存ツールからのユーザーデータが問題なく移行できているか」「セグメントの機能が問題なく動作するか」「既存ツールと同等以上の精度でメールとアプリ内メッセージの配信ができるか」をクリア基準とし、それが確認できた段階で、四半期ごとにグループ分けをした次のサイト群の実装へと進める計画を立てました。
なお、CRMチームの準備タスクの中でも、特に注意深く進めたのが「IPウォームアップ」です。新しいシステムから大量のメールを突如送ると迷惑メールと判定されるリスクがあるため、レピュテーション(送信者評価)を落とさないよう、Brazeのガイドラインを参考にしながら配信ボリュームを増やしていきました。また、IPウォームアップを実施する際のメールのコンテンツも、できるだけ高い開封率を達成できるように慎重に協議しました。
振り返ってみると、導入のスケジュールは立てられていたものの、決して順風満帆とは言えませんでした。
まず、Techチーム内で新たに創設されたチームがBrazeとの直接のやり取りを担っていたため、実際に現場で運用を行う私たちは、導入のプロセス自体にあまり関与できませんでした。さらに、これは海外あるあるかもしれませんが、転職による人の入れ替わりが激しく、導入中にBrazeとやり取りしていた担当者が辞めてしまい、ノウハウが十分に共有されないという事態も発生しました。(しかもそれが1回ではありませんでした…)
「わからないことはBrazeのドキュメントを見ながら対応」と言われていたものの、後から当時のプロジェクトチームの責任者がしっかりとしたオンボーディングを受けていたことを知り、「それは現場で実際に手を動かす私たちも受けたかったものではないか…!」と頭を抱えたことも良い(?)思い出です。
実のところ、こうした「ツールの導入を主導するマネジメントや開発側」と「実際に運用を回す現場側」の分断や、ノウハウの属人化は、決して海外だけのことではありません。日本企業においても、「ツールは導入されたが、現場に運用ノウハウが落ちてこない」というケースは頻繁に見受けられます。導入を成功させるには、一定の段階から実際に日々のオペレーションで手を動かす運用担当者を巻き込んだプロジェクト体制を作ることがいかに重要か、痛感した出来事でした。
また、どんなデータを取る必要があるか、パーソナライズしたい方向性などデータの持ち方についても学びがありました。タグやカスタムイベント、カスタム属性などは将来を見据えた計画が不可欠です。当時は知らなかったのですが、特にカスタムイベントはデータポイントの消費にも大きく関わってくるため、事前の設計がいかに重要かを身をもって知りました。
日本のマーケティング現場でも、「とりあえずツールを入れてから使い方を考えよう」と進めてしまい、後から「本当に必要なデータが取れていない」「想定外にコスト(データ消費量)が膨らんでしまった」と壁にぶつかる企業は少なくありません。将来どのようなパーソナライズを行いたいかを見据えた、綿密なデータプランニングが不可欠です。
そして、これはBrazeに限ったことではありませんが、これまでチャネルごとに特化したツールを使い分けていたこともあり、移行当初は既存ツールでやっていたことが再現できないと戸惑うこともありました。しかし、これも後からわかったことですが、開発さえすれば以前使っていたツールと似たようなことがBrazeでも実装可能でした。ただし、開発が必要になってくるので、最初からすべてやろうとせず、複雑なものはオペレーションがうまく回るようになってから始めるのも押さえておきたいポイントです。
計画通りにいかないこともあり、導入プロセスでは苦労もありましたが、結果としては期待していた変化がしっかりと見られました。
一番大きかったのは、データの一元化です。これまで見えていなかった「どのチャネルが本当に効果を生んでいるのか」が明確になり、逆に効果が出ていない施策や無駄な配信をバッサリとカットできるようになりました。チャネル単体のツールで見ていた時は効果がある!と思っていたのに、実は最終的にCVに繋がっていたのはそれじゃなかった…という発見が複数ありました。
また、バリアントを使ったA/Bテストが非常に簡単に行えるようになったことも大きな収穫です。「これとあれ、どっちがいいだろう?」とチーム内でアイデアが複数出た際、すぐにテストを実施して知見を蓄積できる環境が整いました。メールのコンテンツ自体もそうですが、複数チャネルでのテストや、キャンバスでどのシナリオに最も効果があるかを見れたのが、改善していく上でとても参考になりました。
さらに、カスタムイベントや属性を活用することで、きめ細やかなセグメント設定が可能になりました。その結果、一人ひとりのユーザーにこれまでより関連性の高いメッセージを届けられるようになり、開封率やクリック率、そしてCVの向上にもつながりました。そして導入前に期待されていた1つであるサイトスピードも改善され、サイト自体のヘルススコアが向上しました。
何より、現場でオペレーションを回していた私にとっては、これまで既存ツールでデータのインポート・エクスポートに追われていた時間やサイロ化したデータを集めるために費やしていた時間を「どんな施策を打とうか?」と考える時間に充てられるようになったことも大きい成果の1つでした。
私たちがBrazeを導入した結果、以前抱えていた課題は以下のように改善されました。
| 分類 | 導入前の状態 (Before) | 導入後の変化 (After) |
|---|---|---|
| データの分断 | チャネルごとにデータが独立しており、ユーザーの横断的な行動が追えない。 | 全チャネルのデータが集約され、ユーザーの行動を「線」として把握可能に。 |
| 最適化の欠如 | 施策単体の数値は見えても、チャネルを跨いだ比較ができない。 | チャネルを跨いだA/Bテストが実現し、データに基づいた最適化が可能に。 |
| 運用オペレーション | ツール間の連携のため、手動でのCSVエクスポート/インポートが発生。 | データ連携が自動化され、手作業が解消。より戦略的な業務に時間を使える体制へ。 |
| パーソナライズの壁 | 既存ツールの仕様により、詳細な条件指定ができず、画一的な一斉配信になりがち。 | 行動トリガーに基づく柔軟な配信が可能になり、ユーザー一人ひとりに最適なアプローチを実現。 |
このように、Brazeの導入によってデータやチャネルの分断と手作業による非効率が解消され、顧客一人ひとりに合わせた最適なアプローチを実行するためのマーケティング活動が実現できるようになりました。
私の実体験からもわかる通り、Brazeは強力なツールですが、その真価を発揮するには「導入前の課題整理」「将来を見据えたチャネル設計」「データ活用方針の綿密なプランニング」が不可欠です。
パワー・インタラクティブでは、Brazeの導入・活用支援はもちろんのこと、私が現場で直面したような導入前の壁を越えるための課題整理やデータ活用方針の整理からサポートしています。Brazeの検討を進められている方は、ぜひお気軽にご相談ください。Braze支援サービス
2回にわたり、私の実体験に基づいたBraze導入レポートをお届けしました。現場でのリアルな課題や、それを乗り越えた先の成果について、少しでも皆様の参考になれば幸いです。
さて、次回は視点を変え、Brazeというプラットフォーム自体の機能的な強みに焦点を当てます。導入体験記から一歩踏み込み、Brazeが具体的にどのような機能を備え、他社ツールと比較してどこに優位性があるのか。その「本質的な価値」について、詳しく解説していきます。
▶ 前編から読む:【実体験レポ前編】なぜBrazeが必要だったのか? | 次回のテーマ:Brazeは何がすごいのか?“ユーザー単位”で考えるCRM
導入決定から最初のサイトへの実装までは約3ヶ月、その後すべてのサイトへの展開が完了するまでには約12ヶ月というタイムラインで進行しました。
Braze導入で苦労した点は何でしたか?導入を主導するTech・マネジメント側と、実際に運用する現場側の分断やノウハウの属人化、将来を見据えたデータの持ち方(タグ・カスタムイベント・カスタム属性)の設計、既存の専用ツールからの移行に伴う戸惑い、迷惑メール判定を避けるためのIPウォームアップなどです。
Braze導入後にどんな成果がありましたか?データの一元化でチャネル横断の効果が可視化され、無駄な配信を削減。A/Bテストが簡単に行えるようになり、カスタムイベント・属性できめ細かなセグメントが可能に。手作業が減り、より戦略的な業務に時間を使える体制になりました。
Braze の導入・活用、導入前の課題整理やチャネル設計・データ活用方針の整理についてご相談ください。現場経験を持つコンサルタントが伴走支援します。
Braze活用支援サービスを見る